月60時間超の時間外労働とは?
月60時間超の時間外労働とは、1か月の法定時間外労働が60時間を超えた部分のことです。
通常の時間外労働については、原則として25%以上の割増賃金率が必要です。これに対して、1か月60時間を超える法定時間外労働については、50%以上の割増賃金率が必要になります。
この記事では、月60時間超の時間外労働について、25%以上と50%以上の違い、中小企業への適用、深夜労働・休日労働との関係、就労条件総合調査での読み方を整理します。
結論|1か月60時間を超える法定時間外労働には50%以上の割増賃金率が必要
月60時間超の時間外労働で最初に押さえたいのは、対象になるのは「1か月60時間を超える法定時間外労働の部分」だという点です。
1か月の法定時間外労働が60時間を超えた場合、その超えた時間については、50%以上の割増賃金率で割増賃金を計算します。
| 区分 | 割増賃金率 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 通常の時間外労働 | 25%以上 | 法定労働時間を超える時間外労働 |
| 月60時間を超える時間外労働 | 50%以上 | 1か月60時間を超えた法定時間外労働の部分 |
さくらもち【もちの一言】
月60時間超のポイントは、「月60時間を超えた全部」ではなく、「1か月の法定時間外労働が60時間を超えた部分」です。まずは、何を数えて60時間を見るのかを整理しましょう。
そもそも時間外労働とは何か
時間外労働とは、法定労働時間を超えて行われる労働をいいます。
労働基準法上の法定労働時間は、原則として1日8時間、1週40時間です。この法定労働時間を超える労働が、時間外労働として問題になります。
ただし、会社が定める所定労働時間を超えたからといって、すぐに法定時間外労働になるとは限りません。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 所定労働時間 | 会社が就業規則や労働契約で定めた労働時間 |
| 法定労働時間 | 法律上の上限として定められた労働時間 |
| 法定時間外労働 | 法定労働時間を超える労働 |
月60時間超の時間外労働を見るときは、このうち「法定時間外労働」を累計して考えることが大切です。
「月60時間超」は何を数えるのか
月60時間超の時間外労働では、1か月の法定時間外労働時間を累計していきます。
そして、1か月の法定時間外労働が60時間を超えた時点から、その超えた部分について50%以上の割増賃金率が必要になります。
たとえば、1か月の法定時間外労働が70時間になった場合、60時間までの部分と、60時間を超えた10時間の部分を分けて考えます。
| 1か月の法定時間外労働 | 考え方 |
|---|---|
| 60時間までの部分 | 通常の時間外労働として25%以上 |
| 60時間を超えた部分 | 50%以上の割増賃金率が必要 |
このように、月60時間超の割増賃金率は、1か月の時間外労働全体に最初から50%以上をかけるという意味ではなく、60時間を超えた部分に適用されるものとして整理します。
通常の時間外労働25%以上との違い
通常の時間外労働については、25%以上の割増賃金率が必要です。
一方、1か月60時間を超える法定時間外労働については、労働者の長時間労働を抑制し、健康確保を図る観点から、50%以上の割増賃金率が必要とされています。
| 区分 | 割増賃金率 | 主な意味 |
|---|---|---|
| 通常の時間外労働 | 25%以上 | 法定労働時間を超えた労働に対する割増 |
| 月60時間超の時間外労働 | 50%以上 | 長時間労働を抑制するための高い割増率 |



【試験メモ】
「時間外労働=25%以上」とだけ覚えると、月60時間超の論点で混乱します。通常の時間外労働は25%以上、月60時間を超える法定時間外労働は50%以上、と分けて整理しましょう。
中小企業にも令和5年4月1日から適用
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率50%以上は、大企業では先に適用されていましたが、中小企業についても令和5年4月1日から適用されています。
そのため、現在は中小企業についても、1か月60時間を超える法定時間外労働には50%以上の割増賃金率が必要です。
年度記事や統計記事を読むときは、古い年度の記事や資料では、中小企業への適用猶予が残っていた時期の説明が含まれる場合があります。現在の制度として読む場合は、適用時期に注意が必要です。



【実務メモ】
中小企業では、令和5年4月1日以降、月60時間を超える法定時間外労働について50%以上の割増賃金率が必要です。古い就業規則や賃金規程では、25%以上のままになっていないか確認が必要です。
深夜労働・休日労働との関係
月60時間超の時間外労働を考えるときは、深夜労働や休日労働との関係も整理しておく必要があります。
深夜労働は、原則として午後10時から午前5時までの労働です。月60時間を超える法定時間外労働が深夜時間帯に及ぶ場合には、時間外労働の割増と深夜労働の割増をあわせて考えます。
| 区分 | 基本的な割増率 |
|---|---|
| 通常の時間外労働 | 25%以上 |
| 月60時間超の時間外労働 | 50%以上 |
| 深夜労働 | 25%以上 |
| 月60時間超の時間外労働+深夜労働 | 75%以上 |
一方、法定休日労働については、月60時間超の時間外労働の計算とは区別して整理します。休日労働には休日労働としての割増賃金率があり、時間外労働とは別の論点になります。
代替休暇とは何か
月60時間を超える時間外労働については、一定の要件のもとで、割増賃金の引上げ分の支払いに代えて、有給の休暇を付与する仕組みがあります。これを代替休暇といいます。
ただし、代替休暇は、月60時間超の時間外労働そのものがなくなる制度ではありません。また、通常の年次有給休暇とも別に整理されます。
社労士試験では、月60時間超の割増賃金率とあわせて、代替休暇の存在も押さえておくと理解しやすくなります。
| 制度 | 見るポイント |
|---|---|
| 年次有給休暇 | 一定要件を満たした労働者に付与される法定休暇 |
| 代替休暇 | 月60時間超の割増賃金引上げ分に対応して設けられる休暇 |
就労条件総合調査ではどう読むか
就労条件総合調査では、時間外労働の割増賃金率について、通常の時間外労働に係る割増賃金率と、月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率が扱われることがあります。
このときは、次の点を分けて読むと整理しやすくなります。
| 見る項目 | 読み方 |
|---|---|
| 通常の時間外労働の割増賃金率 | 25%、26%以上など、通常の時間外労働に対する定めを見る |
| 月60時間超の割増賃金率 | 60時間を超えた部分に対する割増率を見る |
| 企業割合 | 割増賃金率を定めている企業の割合を見る |
| 中小企業と中小企業以外 | 企業規模別の制度整備状況を見る |
また、就労条件総合調査の数値を見るときは、「25%以上」「50%以上」という法令上の基準と、「その割合を定めている企業がどのくらいあるか」という統計上の割合を分けて読む必要があります。



【読み解きメモ】
統計で見る「50%以上の企業割合」は、法令上の50%以上という基準そのものとは別です。法令上の基準と、企業がどのように定めているかという統計結果を分けて読むと、混乱しにくくなります。
社労士試験で押さえたいポイント
- 通常の時間外労働は25%以上の割増賃金率が必要である
- 1か月60時間を超える法定時間外労働には50%以上の割増賃金率が必要である
- 中小企業にも令和5年4月1日から50%以上が適用されている
- 月60時間超の時間外労働が深夜に及ぶ場合は、深夜割増との関係も確認する
- 法定休日労働は、月60時間超の時間外労働とは区別して整理する
- 代替休暇は、年次有給休暇とは別の制度として整理する
- 就労条件総合調査では、法令上の基準と統計上の企業割合を分けて読む
実務で見るときの注意点
- 1か月の起算日をどのように定めているか
- 法定時間外労働の累計を正しく管理できているか
- 60時間を超えた部分に50%以上の割増率を適用しているか
- 中小企業でも令和5年4月1日以降の規程になっているか
- 深夜労働と重なる場合の割増率を確認しているか
- 法定休日労働を時間外労働と混同していないか
- 代替休暇制度を導入する場合、労使協定や運用方法を整理しているか
- 給与計算システムが月60時間超に対応しているか
月60時間超の時間外労働は、制度を知っているだけでなく、勤怠集計と給与計算が正しく連動しているかが重要です。
関連する年度記事とあわせて読む
月60時間超の時間外労働に係る割増賃金率は、年度記事で企業の定め方を確認できます。制度の意味を整理したうえで統計結果を見ると、25%以上、50%以上、中小企業と中小企業以外の違いが読みやすくなります。
- 令和7年版 就労条件総合調査で月60時間超の割増賃金率を見る
- 時間外労働の割増賃金率25%以上の基本を確認する
- 賃金・手当・福利厚生の制度解説をまとめて見る
- 賃金・手当・福利厚生の記事一覧を見る
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