みなし労働時間制とは?
みなし労働時間制とは、一定の条件のもとで、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。
労働時間は、原則として実際に働いた時間を把握して管理します。しかし、業務の性質や働く場所によっては、実労働時間を正確に算定しにくい場合や、業務の進め方・時間配分を労働者の裁量に委ねる方がなじむ場合があります。
そのような場合に使われるのが、みなし労働時間制です。
結論|実際の労働時間ではなく、一定時間働いたものとみなす制度
みなし労働時間制では、実際に何時間働いたかではなく、制度上定めた時間を労働したものとして扱います。
ただし、これは「労働時間を管理しなくてよい制度」や「残業代を払わなくてよい制度」という意味ではありません。
みなし労働時間制には、事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制があります。
さくらもち【もちの一言】
「みなし」という言葉だけを見ると、実際の労働時間を見なくてよいように感じるかもしれません。しかし、制度ごとに使える場面や手続が異なります。まずは、どのみなし労働時間制なのかを分けて読むことが大切です。
みなし労働時間制の主な種類
みなし労働時間制は、大きく次の3つに分けて整理できます。
| 種類 | 主な対象 | 基本的な考え方 |
|---|---|---|
| 事業場外みなし労働時間制 | 事業場外で働き、労働時間の算定が困難な場合 | 所定労働時間または通常必要とされる時間を働いたものとみなす |
| 専門業務型裁量労働制 | 専門性が高く、業務遂行の方法を労働者の裁量に委ねる業務 | 労使協定で定めた時間を働いたものとみなす |
| 企画業務型裁量労働制 | 事業運営に関する企画・立案・調査・分析の業務 | 労使委員会で決議した時間を働いたものとみなす |
事業場外みなし労働時間制
事業場外みなし労働時間制は、労働者が事業場外で業務に従事し、労働時間を算定することが困難な場合に使われる制度です。
たとえば、外勤の営業、出張、現場回りなど、会社の事業場外で働く場面が想定されます。
ただし、単に外で働いているだけで当然に適用できるわけではありません。労働時間を算定することが困難かどうかが重要です。
専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務の進め方や時間配分を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある専門的な業務について、労使協定で定めた時間を労働したものとみなす制度です。
対象となる業務は、法令や告示で定められた一定の業務に限られます。
つまり、専門的な仕事であれば何でも対象になるわけではありません。
企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制は、事業運営に関する企画、立案、調査、分析の業務について、労使委員会で決議した時間を労働したものとみなす制度です。
専門業務型と同じく、業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねる性格がありますが、対象業務や手続の面では別の制度として整理されます。



【試験メモ】
みなし労働時間制は、まず「事業場外みなし労働時間制」と「裁量労働制」に分けて整理すると理解しやすくなります。裁量労働制の中に、専門業務型と企画業務型があります。
事業場外みなし労働時間制と裁量労働制の違い
事業場外みなし労働時間制と裁量労働制は、どちらもみなし労働時間制に含まれますが、制度の考え方は異なります。
| 区分 | 見るポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 事業場外みなし労働時間制 | 事業場外で働き、労働時間の算定が困難か | 外で働けば必ず適用できるわけではない |
| 専門業務型裁量労働制 | 対象業務が専門業務型の対象業務に該当するか | 専門職なら何でもよいわけではない |
| 企画業務型裁量労働制 | 企画・立案・調査・分析などの対象業務か | 労使委員会の決議など手続が重要 |
つまり、同じ「みなし労働時間制」でも、事業場外であることに着目する制度と、業務の裁量性に着目する制度があると整理できます。
みなし労働時間制と時間外労働の関係
みなし労働時間制を導入していても、時間外労働や割増賃金の問題がなくなるわけではありません。
たとえば、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合には、時間外労働に関する整理が必要になります。
また、深夜労働や休日労働については、別途確認が必要になる場合があります。
そのため、「みなし労働時間制だから労働時間管理はいらない」と考えるのは危険です。



【実務メモ】
実務では、みなし労働時間制を導入しているかどうかだけでなく、みなし時間、対象業務、対象者、労使協定や労使委員会決議、健康・福祉確保措置などを確認する必要があります。
裁量労働制の注意点
裁量労働制は、労働者に業務の進め方や時間配分の裁量があることを前提とする制度です。
そのため、実際には使用者が細かく業務の進め方や時間配分を指示している場合には、制度の趣旨と合わない可能性があります。
また、裁量労働制については、令和6年4月1日から省令・告示の改正が施行・適用されています。最新の実務確認では、厚生労働省の資料もあわせて確認することが大切です。
就労条件総合調査ではどう読むか
就労条件総合調査では、みなし労働時間制について、制度を採用している企業割合や、制度の種類別割合などが示されることがあります。
このときは、次の点を分けて読むと整理しやすくなります。
| 見る項目 | 読み方 |
|---|---|
| みなし労働時間制全体 | 制度を採用している企業や労働者の割合を見る |
| 事業場外みなし労働時間制 | 外勤・出張など、労働時間算定が困難な業務との関係で見る |
| 専門業務型裁量労働制 | 対象業務が限定される制度として見る |
| 企画業務型裁量労働制 | 企画・立案・調査・分析などの業務と手続に注目して見る |
また、統計上の割合を読むときは、「企業割合」と「労働者割合」を混同しないことが大切です。



【読み解きメモ】
みなし労働時間制は、制度名だけでひとまとめに読むと分かりにくくなります。事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制に分けて読むと、統計の意味が整理しやすくなります。
社労士試験で押さえたいポイント
- みなし労働時間制には、事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制がある
- 事業場外みなし労働時間制は、事業場外で労働時間を算定しにくい場合に問題になる
- 専門業務型裁量労働制は、対象となる専門業務が限定される
- 企画業務型裁量労働制は、企画・立案・調査・分析などの業務と労使委員会の決議がポイントになる
- みなし労働時間制でも、時間外労働、休日労働、深夜労働の整理は必要になる
- 就労条件総合調査では、制度別割合と分母の違いを確認する
実務で見るときの注意点
- どのみなし労働時間制を使っているのか
- 対象業務が制度の要件に合っているか
- 対象労働者の範囲が明確か
- みなし時間が適切に定められているか
- 労使協定や労使委員会決議などの手続が整っているか
- 健康・福祉確保措置や苦情処理措置が整備されているか
- 深夜労働・休日労働・時間外労働の処理が確認されているか
- 実際の働き方と制度運用がずれていないか
みなし労働時間制は、制度名だけで判断せず、対象業務、手続、みなし時間、実際の働き方をあわせて見ることが重要です。
関連する年度記事とあわせて読む
みなし労働時間制の採用状況や種類別の割合は、年度記事で確認できます。制度の意味を整理したうえで統計結果を見ると、事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の違いが読みやすくなります。
- 令和7年版 就労条件総合調査でみなし労働時間制の採用状況を見る
- 変形労働時間制とは?1か月・1年単位・フレックスタイム制との違いを解説
- 労働時間・休日・休暇の制度解説をまとめて見る
- 労働時間・休日・休暇の記事一覧を見る
- 調査名別に探す

