法定手当と非法定手当の違い
法定手当と非法定手当は、賃金制度や諸手当を整理するときに使われる考え方です。
一般に、法定手当は、法律上支払いが求められる性格の手当を指して使われます。一方、非法定手当は、会社が就業規則や賃金規程などで任意に設ける手当を指して使われます。
ただし、「法定手当」「非法定手当」という言葉は、労働基準法上の正式な大分類というより、実務上の整理として使われることが多い言葉です。そのため、この記事では、賃金制度や統計を読むための整理として、法定手当と非法定手当の違いを解説します。
結論|法律上支払いが求められるものと、会社が任意に設けるものを分けて考える
法定手当と非法定手当の違いは、簡単にいうと、法律上支払いが求められる性格のものか、会社が任意に設けるものかという点にあります。
| 区分 | 基本的な意味 | 例 |
|---|---|---|
| 法定手当 | 法律上、一定の場合に支払いが求められるもの | 時間外労働の割増賃金、休日労働の割増賃金、深夜割増賃金、休業手当、解雇予告手当など |
| 非法定手当 | 会社が任意に設ける手当 | 通勤手当、家族手当、住宅手当、役付手当、資格手当など |
ただし、名称だけで機械的に判断するのではなく、その手当がどのような根拠で、どのような条件で支給されるのかを見ることが大切です。
さくらもち【もちの一言】
「手当」という名前が付いていても、法律上支払いが必要なものと、会社が独自に設けているものがあります。名前ではなく、支給根拠と支給条件を見るのがポイントです。
法定手当とは何か
法定手当とは、実務上、法律に基づいて一定の場合に支払いが求められる手当や賃金を指して使われる言葉です。
代表的なものとして、時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金があります。法定時間外労働や深夜労働には25%以上、法定休日労働には35%以上の割増賃金率が必要です。
また、使用者の責めに帰すべき事由により労働者を休業させた場合には、平均賃金の60%以上の休業手当が必要とされます。解雇予告を30日前に行わない場合には、不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。
| 例 | 概要 |
|---|---|
| 時間外労働の割増賃金 | 法定労働時間を超える労働に対する割増賃金 |
| 休日労働の割増賃金 | 法定休日に労働した場合の割増賃金 |
| 深夜割増賃金 | 深夜時間帯に労働した場合の割増賃金 |
| 休業手当 | 使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合に支払う手当 |
| 解雇予告手当 | 解雇予告期間が不足する場合に支払う手当 |
なお、これらは厳密には「手当」という名称だけで整理されるものではなく、法律上の支払義務や賃金としての性格を持つものとして理解します。
非法定手当とは何か
非法定手当とは、会社が任意に設ける手当を指して使われることが多い言葉です。
たとえば、通勤手当、家族手当、住宅手当、役付手当、資格手当、皆勤手当などは、会社の就業規則や賃金規程で定めて支給されることが多い手当です。
これらは、会社が制度として設けている場合には、賃金規程や労働契約に基づいて支給する必要があります。ただし、法律がすべての企業に一律に支給を義務付けているものとは限りません。
| 例 | 主な性格 |
|---|---|
| 通勤手当 | 通勤に要する費用などを補う手当 |
| 家族手当・扶養手当 | 家族や扶養状況に応じて支給される手当 |
| 住宅手当 | 住居費などに関連して支給される手当 |
| 役付手当 | 役職や職責に応じて支給される手当 |
| 資格手当 | 資格の保有や業務上の必要性に応じて支給される手当 |
| 皆勤手当 | 出勤状況などに応じて支給される手当 |
非法定手当は、会社ごとの差が大きい部分です。同じ「住宅手当」という名称でも、一律支給なのか、家賃額に応じるのか、扶養状況と連動するのかによって意味合いが変わります。



【実務メモ】
非法定手当は、会社が任意に作れる一方で、いったん就業規則や賃金規程に定めると、労働条件として扱われます。支給条件、対象者、金額、廃止・変更時の扱いを明確にしておくことが重要です。
法定手当と非法定手当の具体例
法定手当と非法定手当は、次のように整理すると理解しやすくなります。
| 区分 | 具体例 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 法定手当に近いもの | 時間外割増賃金、休日割増賃金、深夜割増賃金、休業手当、解雇予告手当 | 法律上、どのような場合に支払いが必要か |
| 非法定手当に近いもの | 通勤手当、家族手当、住宅手当、役付手当、資格手当、皆勤手当 | 会社の規程上、誰に、どの条件で支給するか |
「手当」という名称だけでは判断できない
手当を見るときに注意したいのは、名称だけでは法的な扱いを判断できないという点です。
たとえば、通勤手当、家族手当、住宅手当という名称であっても、割増賃金の算定基礎から除外できるかどうかは、名称だけでは決まりません。実質的にどのような基準で支給されているかを確認する必要があります。
家族数や通勤距離、住宅費用などに関係なく一律に支給される場合には、名称が家族手当や通勤手当、住宅手当であっても、割増賃金の算定基礎に含まれる場合があります。



【試験メモ】
「家族手当」「通勤手当」「住宅手当」という名前だけで、割増賃金の算定基礎から除外できると判断しないようにしましょう。名称ではなく、実質で判断する点が重要です。
割増賃金の算定基礎との関係
法定手当と非法定手当を整理するときに、あわせて確認したいのが、割増賃金の算定基礎です。
割増賃金の算定基礎から除外できる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金があります。
ただし、これらは名称だけで除外できるわけではありません。実質的に、家族数、通勤距離、住宅費用などに応じて支給されるものかどうかが重要です。
| 手当名 | 注意点 |
|---|---|
| 家族手当 | 家族数に関係なく一律支給の場合は注意 |
| 通勤手当 | 通勤距離や実費と関係なく一律支給の場合は注意 |
| 住宅手当 | 住宅費用と関係なく一律支給の場合は注意 |
つまり、非法定手当だからといって、必ず割増賃金の算定基礎から除外できるわけではありません。
所定内賃金・諸手当との関係
就労条件総合調査などで諸手当を読むときは、法定手当・非法定手当という整理と、所定内賃金・所定外賃金という整理を分けて考える必要があります。
たとえば、通勤手当、家族手当、住宅手当、役付手当などは、会社の制度として毎月きまって支給される場合、所定内賃金の一部として整理されることがあります。
一方、時間外手当、休日出勤手当、深夜割増賃金などは、所定外労働に対する賃金として、所定外賃金に整理されます。
| 見方 | 確認すること |
|---|---|
| 法定手当・非法定手当 | 法律上支払いが求められる性格か、会社が任意に設けるものか |
| 所定内賃金・所定外賃金 | 通常の賃金か、所定外労働に対する賃金か |
| 諸手当 | 基本給とは別に、条件や役割に応じて支給される手当か |
| 割増賃金の算定基礎 | 割増賃金を計算するときに含めるか除外できるか |



【読み解きメモ】
手当を読むときは、「法定か非法定か」「所定内か所定外か」「割増賃金の算定基礎に入るか」を分けると整理しやすくなります。1つの分類だけで判断しないことが大切です。
就労条件総合調査ではどう読むか
就労条件総合調査では、諸手当の種類別支給割合や、所定内賃金に占める基本給・諸手当の割合が示されることがあります。
このとき、統計上の「諸手当」は、会社が支給している手当の種類や割合を見るための分類です。法定手当と非法定手当を直接分けた表ではない場合があります。
そのため、統計を読むときは、次のように整理すると分かりやすくなります。
| 見る項目 | 読み方 |
|---|---|
| 諸手当の種類別支給割合 | どの手当を支給する企業が多いかを見る |
| 所定内賃金に占める諸手当の割合 | 賃金の中で手当部分がどれくらいを占めるかを見る |
| 手当名 | 名称だけで法的扱いを判断しない |
| 制度上の扱い | 割増賃金、最低賃金、賞与算定基礎などとは別に確認する |
年度記事では統計上の支給割合を確認し、この固定記事では、手当の法的・実務的な見方を整理する、という使い方がおすすめです。
社労士試験で押さえたいポイント
- 法定手当・非法定手当は、実務上の整理として使われることが多い
- 法定手当に近いものとして、割増賃金、休業手当、解雇予告手当などがある
- 非法定手当は、会社が任意に設ける手当として整理される
- 通勤手当、家族手当、住宅手当などは、会社の規程に基づいて支給されることが多い
- 手当の名称だけで、割増賃金の算定基礎から除外できるとは限らない
- 所定内賃金・所定外賃金、諸手当、割増賃金の算定基礎を分けて整理する
- 統計上の諸手当と、法律上の支払義務を混同しない
実務で見るときの注意点
- その手当が法律上必要なものか、会社が任意に設けたものか
- 就業規則や賃金規程に支給条件が明記されているか
- 対象者、金額、支給時期、支給停止条件が明確か
- 割増賃金の算定基礎に含めるか、除外できるか
- 賞与や退職金の算定基礎に含めるか
- 手当の変更・廃止が不利益変更に当たる可能性はないか
- 給与明細上の名称と実態が一致しているか
手当は、名称だけで判断せず、支給根拠、支給条件、計算方法、法令上の扱いを分けて確認することが大切です。
関連する年度記事とあわせて読む
法定手当と非法定手当の違いを整理しておくと、就労条件総合調査で諸手当の種類別支給割合や、所定内賃金に占める諸手当の割合を読むときに理解しやすくなります。
- 令和7年版 就労条件総合調査で諸手当の支給状況を見る
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- 所定内賃金と諸手当の関係を確認する
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