こんにちは!さくらもちです。今回は、労働・社会保障の統計でよく目にする「企業調査」と「事業所調査」の違いを整理します。
同じ「雇用均等基本調査」でも、女性管理職などを扱う企業調査と、育児休業・短時間勤務制度などを扱う事業所調査があります。どちらも職場に関する数字ですが、調査対象と集計の単位が同じとは限りません。
この記事では、令和7年度雇用均等基本調査を具体例に、企業・事業所の定義、調査対象、割合の読み分け方を確認します。社労士試験だけでなく、ニュースや人事労務の資料を読む際にも使える考え方です。
結論|企業調査と事業所調査は「何を単位に調べるか」が違う
先に結論です。企業は事業を行う組織全体、事業所は原則として経済活動が行われる場所ごとの単位です。そのため、企業調査と事業所調査では、調査の対象や結果を集計する単位が異なります。
| 確認すること | 企業調査 | 事業所調査 |
|---|---|---|
| 基本の調査単位 | 企業(事業を行う組織全体) | 事業所(原則として場所ごとの活動単位) |
| 一つの企業との関係 | 企業全体を一つの単位として扱う | 一つの企業に複数の事業所が含まれることがある |
| 結果の読み方 | 企業の状況を調べた調査として読む | 事業所の状況を調べた調査として読む |
| 割合で注意すること | 企業調査の中にも人数を分母とする指標がある | 事業所調査の中にも労働者を分母とする指標がある |
さくらもち【もちの一言】
「企業調査=すべて企業割合」「事業所調査=すべて事業所割合」とは限りません。調査の単位と各指標の分母は、分けて確認するのがポイントです。
企業と事業所の違いとは?
企業とは|本社や支店を含めた事業の単位
企業は、一般に、同一の経営主体による事業活動をまとめて捉える単位です。たとえば本社のほかに支店や工場を持つ会社でも、会社全体としては一つの企業です。
ただし、親会社と子会社など、別々の経営主体から成る企業グループ全体を、そのまま一つの企業と数えるわけではありません。また、統計ごとに対象となる企業の範囲や定義があるため、調査概要を確認します。
事業所とは|本社・支店・工場など場所ごとの単位
事業所は、原則として、一定の場所で継続的に経済活動が行われている単位です。本社、支社・支店、営業所、工場などは、条件に応じてそれぞれ事業所に当たります。
この基本的な考え方は、総務省統計局の経済センサスにおける用語の解説にも示されています。ただし、実際の調査での定義や対象範囲は、それぞれの調査の説明が優先されます。
具体例|一つの企業に三つの事業所がある場合
次は、単位の違いを理解するための仮の例です。実際の雇用均等基本調査の集計結果ではありません。
| 同じ会社Aの拠点 | 企業としての見方 | 事業所としての見方 |
|---|---|---|
| 東京本社 | A社という一つの企業に含まれる | 東京本社という事業所 |
| 大阪支店 | 同じA社に含まれる | 大阪支店という事業所 |
| 名古屋工場 | 同じA社に含まれる | 名古屋工場という事業所 |
| 単位の合計 | 1企業 | 3事業所 |
この例から分かるのは、企業数と事業所数を同じ数字として数えられないということです。「1企業=1事業所」と決まっているわけではありません。なお、これは数え方のイメージであり、調査の標本として必ずA社の全拠点が選ばれるという意味でもありません。
令和7年度雇用均等基本調査では、対象がどう違う?
厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査は、男女の雇用均等問題に係る雇用管理の実態を把握するための一般統計調査です。企業調査と事業所調査をそれぞれ別の対象範囲で実施しています。
| 項目 | 企業調査 | 事業所調査 |
|---|---|---|
| 調査対象 | 常用労働者10人以上の民営企業 | 常用労働者5人以上の民営事業所 |
| 調査対象数 | 6,000企業 | 6,300事業所 |
| 有効回答数 | 3,077企業 | 3,291事業所 |
| 有効回答率 | 51.3% | 52.2% |
| 調査の基準時点 | 原則として令和7年10月1日現在 | 原則として令和7年10月1日現在 |
この「10人以上」と「5人以上」は令和7年度雇用均等基本調査の対象条件です。すべての企業調査・事業所調査に共通する人数基準ではありません。他の統計を見るときは、改めてその調査の対象を確かめましょう。
また、6,000企業・6,300事業所は抽出した調査対象数、3,077企業・3,291事業所は有効回答数です。全国の企業数や事業所数そのものを表すわけではありません。公表された各割合の分母を、そのまま有効回答数と考えることもできません。



【なるほどポイント】
企業調査と事業所調査は、単位だけでなく調査対象に含まれる規模の条件も異なります。同じ調査名・同じ年度でも、対象範囲をそろえずに数値を比べないようにしましょう。
企業調査では、どのような項目を見ている?
女性管理職・採用・昇進などの雇用管理
令和7年度の企業調査では、正社員・正職員の職種別の状況、採用、管理職等、ハラスメント防止対策などが調査されています。年度記事では、「令和7年度 雇用均等基本調査|職種・管理職・ハラスメントの実態」と「令和7年度 雇用均等基本調査|女性管理職・昇進・不妊治療支援の状況」がその代表例です。
例えば、課長相当職以上の女性管理職を有する企業割合は54.1%でした。これは「女性管理職がいる企業」を、企業を単位として見た数字です。
コース別雇用管理制度の導入状況
年度記事「令和7年度 雇用均等基本調査|コース別雇用管理制度の企業調査」では、コース別雇用管理制度がある企業割合を扱っています。令和7年度の常用労働者10人以上の企業では6.1%、30人以上の企業では10.9%でした。
この二つは企業調査の結果ですが、対象にする企業規模の区分が違います。企業調査の中でも、全体と規模別では集計対象が変わることに注意します。
事業所調査では、どのような項目を見ている?
育児休業制度・産後パパ育休制度の規定状況
令和7年度の事業所調査では、育児休業制度や産後パパ育休制度について、事業所での規定状況や取得状況を調べています。年度記事「令和7年度 雇用均等基本調査|育児休業制度・産後パパ育休制度と取得率のポイント」では、育児休業制度の規定がある事業所割合は84.0%と整理されています。
これは会社全体を単位とした「企業割合」ではなく、調査対象となる事業所を単位とする割合です。
短時間勤務制度・多様な正社員制度などの整備状況
年度記事「令和7年度 雇用均等基本調査|短時間勤務制度と3歳以降の柔軟な働き方(事業所調査)」では、3歳までの子の育児に関する所定労働時間の短縮措置等について、いずれかの制度がある事業所割合79.7%を取り上げています。「令和7年度 雇用均等基本調査|多様な正社員制度の実施状況と利用状況」では、多様な正社員として勤務できる事業所割合26.6%を取り上げています。
ここでも、各項目は事業所調査に基づくものです。ただし制度の種類・対象となる事業所・質問内容が異なる数字同士を、そのまま優劣の比較に使うことはできません。
事業所調査にも、労働者を分母にした割合がある
ここは特に重要です。年度記事「令和7年度 雇用均等基本調査|育児休業取得率と事業所割合のポイント」では、令和7年度の男性の育児休業取得率50.9%を扱っています。これは事業所調査の結果ですが、一定の期間に配偶者が出産した男性を対象にした人を基準とする指標です。
一方、同じ年度記事にある育児休業者がいた事業所の割合57.1%は、配偶者が出産した男性がいる事業所のうち、男性育児休業者がいた事業所の割合です。どちらも事業所調査から公表された数字でも、指標の分母は異なります。
反対に、企業調査でも「管理職に占める女性割合13.8%」のように、企業数ではなく管理職の人数構成を示す指標があります。調査の区分名と、個々の指標の分母を同一視しないことが大切です。



【なるほどポイント】
企業調査・事業所調査の違いは「調査対象と単位」の話です。一方、企業割合・事業所割合・労働者割合の違いは「何を100%とするか」の話です。後者の詳しい読み方は、固定記事「統計の分母とは?企業割合・事業所割合・労働者割合と構成比の違い」で整理しています。
企業割合・事業所割合・労働者割合はどう読み分ける?
調査の種類を確認したら、次に統計表の指標名を最後まで読むことが大切です。実際の年度記事に出てくる例を並べると、次のようになります。
| 指標の例 | どの調査か | 割合が表すもの |
|---|---|---|
| 女性管理職を有する企業:54.1% | 企業調査 | 企業のうち、該当する女性管理職がいる企業の割合 |
| コース別雇用管理制度あり:6.1% | 企業調査 | 対象企業のうち制度がある企業の割合 |
| 育児休業制度の規定あり:84.0% | 事業所調査 | 対象事業所のうち規定がある事業所の割合 |
| 男性育児休業取得率:50.9% | 事業所調査 | 対象となる男性のうち、定義に該当する育児休業者の割合 |
| 管理職に占める女性:13.8% | 企業調査 | 対象となる管理職の人数に占める女性の割合 |
この表のポイントは、「企業調査で得た労働者割合」も「事業所調査で得た労働者割合」もあり得るということです。調査の種類は入口、指標の分母は結果を読む際の確認事項と考えると整理しやすくなります。
異なる調査結果を比較するときの注意点
① 企業数と事業所数を直接比べない
企業調査の54.1%と、事業所調査の84.0%のように、単位も質問内容も異なる数字を引き算して、「会社と職場の差が29.9ポイントある」と解釈することはできません。何を対象とする割合か、どの事柄を調べたかが違うためです。
② 調査対象の人数基準・産業・規模区分を確認する
企業調査は10人以上の民営企業、事業所調査は5人以上の民営事業所と、令和7年度調査では対象条件が異なります。また、30人以上の区分、特定産業の区分など、集計対象がさらに絞られた数値もあります。
「全国すべての会社」「すべての事業所」についての割合と読み替えず、調査概要や表の注記に沿って読むことが大切です。
③ 有効回答数を単純に分母としない
雇用均等基本調査は、調査対象の一部を抽出して全体の状況を推計する標本調査です。公表された割合は、集計・推計の方法や、項目ごとに該当する回答対象を確認して読む必要があります。
有効回答率51.3%と52.2%は調査への回答の状況を表しており、女性管理職がいる割合や育児休業取得率のことではありません。
④ 時点・対象期間・調査項目の変更を確認する
令和7年度調査は原則として令和7年10月1日現在の状況を調べていますが、育児休業の取得、制度の利用、昇進などには別途、一定の集計期間が設けられる項目があります。
また、過年度には介護支援制度など、令和7年度の結果概要の中心項目とは異なる項目が掲載されている年度もあります。「前年にも同じ項目があるはず」と考えず、各年度の調査票・結果概要・統計表を確認します。
一つの統計から数値の違いが見えても、その違いが生じた原因や、個々の企業の制度運用まで断定できるわけではありません。
実務・社会理解では、調査単位の違いをどう使う?
例えば「企業として、どのような雇用管理制度を設けているか」を知りたい場合と、「各事業所で、どのような制度の規定・利用状況があるか」を知りたい場合では、確認したい情報が異なります。
企業調査の結果は企業全体の雇用管理の状況を、事業所調査の結果は事業所を対象にした状況を考える材料になります。ただし、事業所調査だからといって制度が事業所ごとに別々に決められていると分かるわけではありません。
また、全国の調査結果をそのまま自社の状況と同一視することもできません。実務では、統計の定義を確認したうえで、自社の就業規則、制度の適用範囲、対象者の状況などを別に確認しましょう。
社労士試験で押さえたいポイント



【試験メモ】
「企業調査は10人以上」「事業所調査は5人以上」は、令和7年度雇用均等基本調査での条件です。すべての統計に当てはまる一般ルールではありません。
- 企業は事業を行う組織全体、事業所は原則として場所ごとの経済活動の単位である。
- 一つの企業に、複数の事業所がある場合がある。
- 令和7年度雇用均等基本調査の企業調査は、常用労働者10人以上の民営企業を対象としている。
- 同年度の事業所調査は、常用労働者5人以上の民営事業所を対象としている。
- 企業調査の中にも人数割合があり、事業所調査の中にも労働者割合がある。
- 調査対象数、有効回答数、有効回答率、結果の割合を混同しない。
- 年度比較では、調査対象、調査項目、時点・期間、注記を確認する。
よくある疑問(FAQ)
Q1. 企業と事業所は同じ意味ですか?
A. 同じではありません。企業は事業活動を行う組織全体、事業所は原則として活動が行われる場所ごとの単位です。一つの企業が複数の事業所を持つことがあります。
Q2. 本社と支店は、それぞれ別の事業所ですか?
A. 原則として異なる場所で事業所の要件を満たしていれば、本社も支店もそれぞれ事業所として扱われます。ただし、調査ごとの定義や対象範囲の確認が必要です。
Q3. 令和7年度雇用均等基本調査では、何人以上が対象ですか?
A. 企業調査は常用労働者10人以上の民営企業、事業所調査は常用労働者5人以上の民営事業所です。ほかの統計も同じ人数基準とは限りません。
Q4. 事業所調査に出てくる割合は、すべて事業所割合ですか?
A. いいえ。男性育児休業取得率のように、事業所調査の結果であっても、労働者を基準にした割合があります。個々の統計項目の分母を確認しましょう。
Q5. 企業調査と事業所調査の割合を、そのまま比較できますか?
A. 単位や対象範囲、調査項目が異なる場合、そのまま差を取って意味づけることはできません。比較する前に、調査対象、指標の定義、時点・期間を確認します。
まとめ|調査単位を確認し、次に指標の分母を確認しよう
企業調査と事業所調査は、調査の対象とする単位が違うという点が出発点です。さらに、令和7年度雇用均等基本調査では、企業調査は10人以上の民営企業、事業所調査は5人以上の民営事業所と、対象条件も異なります。
ただし、企業調査の結果がすべて企業割合、事業所調査の結果がすべて事業所割合になるわけではありません。調査の区分を確かめたうえで、個々の指標が企業・事業所・労働者の何を分母にしているのかを確認しましょう。



【もちの一言】
調査名を見たら「企業? 事業所?」、数字を見たら「何のうちの何%?」。この二段階で確認すると、労働統計を読み違えにくくなります。
関連する年度統計記事・出典
ここで使用した具体例は、主に次の年度統計記事で扱っています。
- 令和7年度 雇用均等基本調査|正社員・正職員の男女比率・女性管理職・ハラスメントなど(年度記事No.1/公開URL確認後にリンク追加)
- 令和7年度 雇用均等基本調査|育児休業者割合と事業所割合(年度記事No.2/公開URL確認後にリンク追加)
- 令和7年度 雇用均等基本調査|育児休業制度・産後パパ育休制度(年度記事No.3/公開URL確認後にリンク追加)
- 令和7年度 雇用均等基本調査|短時間勤務制度と3歳以降の柔軟な働き方(年度記事No.4/公開URL確認後にリンク追加)
- 令和7年度 雇用均等基本調査|多様な正社員制度(年度記事No.8/公開URL確認後にリンク追加)
- 令和7年度 雇用均等基本調査|女性管理職・昇進・不妊治療支援(年度記事No.9/公開URL確認後にリンク追加)
- 令和7年度 雇用均等基本調査|コース別雇用管理制度(年度記事No.11/公開URL確認後にリンク追加)
- 令和6年 雇用均等基本調査|介護休業制度の整備状況と取得実態(過年度の事業所調査例)
- 調査名別に探す(雇用均等基本調査などの一覧)
- 調査項目別 最新掲載一覧
分母と構成比の基本は、固定記事「統計の分母とは?企業割合・事業所割合・労働者割合と構成比の違い」で詳しく整理しています。また、制度がある割合と利用実績・取得率の違いは、固定記事「制度あり割合・利用実績あり割合・取得率の違い」で詳しく整理しています。
出典・関連資料
- 厚生労働省|令和7年度雇用均等基本調査(結果概要・統計表)
- 厚生労働省|令和7年度雇用均等基本調査「調査の概要」
- 厚生労働省|令和7年度雇用均等基本調査「用語の解説・利用上の注意」
- 総務省統計局|経済センサス‐基礎調査「用語の解説」
※企業・事業所の一般的な定義は総務省統計局の用語解説を参考にしています。令和7年度雇用均等基本調査の具体的な対象条件や数値については、厚生労働省の当該年度資料を優先しています。
