令和6年 雇用均等基本調査|職種・管理職・ハラスメントの実態

目次

調査概要と背景

令和6年「雇用均等基本調査」1は、厚生労働省が毎年実施している一般統計調査で、企業における男女の雇用管理の実態を把握することを目的としています。
対象は、常用労働者10人以上を雇用する民営企業約6,000社で、有効回答率は53.9%でした。

正社員・正職員の男女比率と職種構成

  • 女性の割合は27.6%にとどまっており、依然として低水準です。
  • 職種構成を見ると、女性は一般職が最多、男性は総合職が最多という傾向が続いています。
さくらもち

この背景には、昭和61年施行の男女雇用機会均等法による制度転換があります。
当初は「努力義務」として男女平等の雇用管理が求められていましたが、平成9年の法改正により、性別による差別的取り扱いは「禁止事項」として明確化されました。
ただし、制度改正からの経過年数を踏まえても、企業運用や意識の浸透にはばらつきがあり、職種別構成における男女差は依然として残っています。

新規学卒者の採用状況と男女別傾向

  • 新規学卒者を採用した企業割合:20.6%
  • 採用区分別の傾向:総合職では男女とも採用が最多、一般職では男性のみ採用が最多
  • 企業規模が大きいほど女性の採用率が高く、5,000人以上の企業では100%、1,000~4,999人規模では94.8%の企業が女性を採用しています。
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なお、本調査では「1人でも女性を採用していれば女性採用企業として集計される」ため、企業規模が大きいほど該当する可能性が高くなります。

男性のみ採用の理由

  • 最多理由:女性の応募がなかった
  • 次点:女性の応募はあったが、採用前に辞退された

採用区分別の傾向と法的留意点

さくらもち

企業が複数の採用区分を設ける中で、特定の区分において結果的に男性のみを採用した事例も見られます。
男女雇用機会均等法では、性別による採用制限は原則として認められておらず、こうした採用結果が法令に抵触していないかどうかについては、慎重な検討が求められます。

女性管理職の状況

  • 女性管理職を有する企業の割合は、課長相当職以上で54.9%、係長相当職以上で64.4%
  • 管理職に占める女性の割合は、課長相当職以上で13.1%、係長相当職以上で15.8%
さくらもち

この調査では「1人でも女性管理職がいれば該当」として集計されるため、企業規模が大きいほど該当率が高くなる傾向があります。
それでも、全体平均では約5割にとどまっており、女性の登用には依然として課題が残されています。

制度的背景と構造的課題

さくらもち

令和4年4月から、女性活躍推進法により、従業員101人以上の企業に対して一般事業主行動計画の策定が義務付けられました。
この計画には、管理職に占める女性労働者の割合などが数値目標として含まれています。

さくらもち

また、令和2年に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では、指導的地位に占める女性の割合を2020年代の可能な限り早期に30%程度まで引き上げることが目標とされています。
しかし、現時点ではこの目標の達成は容易ではなく、法制度の限界と社会構造の壁が影響しています。
具体的には、昇進機会の偏りや採用数の少なさなどが、女性管理職の増加を妨げる要因となっています。

医療・福祉分野における女性管理職

  • 女性管理職の割合が高い産業:医療・福祉分野
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総務省の調査によると、医療・福祉分野では女性の就業者が多く、長年にわたり主戦力として活躍してきた背景があります。
そのため、これらの業種では女性が働きやすい環境づくりに早くから取り組んでおり、一定数の女性が管理職として既に活躍しているという声も多く寄せられています。

ハラスメント対策の取組状況

  • セクシュアルハラスメント対策:89.9%の企業が実施
  • マタニティハラスメント対策:88.0%
  • パワーハラスメント対策:90.0%
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これらの防止措置は、以下の法令に基づき義務付けられています。
・パワーハラスメント:労働施策総合推進法
・セクシュアルハラスメント:男女雇用機会均等法
・マタニティハラスメント:男女雇用機会均等法および育児・介護休業法

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企業規模が大きいほど実施率は高く、特に大規模企業ではほぼ100%の実施率となっています。
一方で、規模の小さい企業では対応が十分に行き届いていないケースもあり、全体平均では約8割の企業が何らかの防止措置を講じている状況です。

ハラスメント事案の発生状況

  • パワハラ相談・事案あり:14.6%
  • セクハラ:6.0%
  • マタハラ:0.9%
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企業規模が大きいほど相談実績が多く、規模が小さい企業では「相談なし」とする回答が多くなっています。
これは従業員数の違いによって、ハラスメントの発生確率に差が生じるためと考えられます。

望ましい取組への対応状況

  • セクハラ:30.1%
  • マタハラ:24.7%
  • パワハラ:26.1%
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「望ましい取組」が約3割にとどまっている背景には、現時点では法的義務ではないことに加え、社外の関係者が関わるケースも多く、対応の難しさや制度整備に必要なノウハウ・リソースの不足が挙げられます。
また、企業規模による対応力の差も大きく、制度化には一定の時間と外部からの支援が必要です。

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こうした状況の中、令和7年に成立した改正法(労働施策総合推進法および男女雇用機会均等法)により、これまで「望ましい」とされていた取組が、今後は「義務」として明確に位置づけられることになりました。
企業にとっては、社内対応だけでなく、社外との関係性にも配慮したハラスメント防止策が求められるようになり、働く側にとっても保護の対象が広がる重要な転換点となります。

FAQ

Q1. 雇用均等基本調査とは何ですか?
A. 厚生労働省が毎年実施している統計調査で、企業における男女の雇用管理の実態を把握することを目的としています。令和6年調査では、常用労働者10人以上の民営企業約6,000社が対象となりました。

Q2. 正社員の男女比率はどのようになっていますか?
A. 女性の割合は27.6%で、依然として低い水準です。職種構成では、女性は一般職が最多、男性は総合職が最多という傾向が続いています。

Q3. 職種構成の男女差にはどのような背景がありますか?
A. 昭和61年施行の男女雇用機会均等法により、男女別の雇用管理制度は見直され、コース別雇用管理制度が導入されました。平成9年の法改正で性別による差別的取り扱いが禁止されましたが、制度の浸透には時間がかかっており、職種構成に偏りが残っています。

Q4. 新規学卒者の採用状況はどうなっていますか?
A. 新規学卒者を採用した企業の割合は全体で20.6%です。企業規模が大きいほど女性の採用率が高く、5,000人以上の企業では100%、1,000~4,999人規模では94.8%の企業が女性を採用しています。

Q5. 女性を採用した企業の定義は?
A. 本調査では、1人でも女性を採用していれば「女性を採用した企業」として集計されます。そのため、企業規模が大きいほど該当する可能性が高くなります。

Q6. 採用区分における男女差と法的留意点は?
A. 企業が複数の採用区分を設ける中で、特定の区分において男性のみを採用した事例もあります。男女雇用機会均等法では性別による採用制限は原則として認められておらず、法令との整合性には慎重な検討が必要です。

Q7. 女性管理職の割合はどの程度ですか?
A. 女性管理職を有する企業の割合は、課長相当職以上で54.9%、係長相当職以上で64.4%です。ただし、管理職に占める女性の割合は課長相当職以上で13.1%、係長相当職以上で15.8%にとどまっています。

Q8. 女性管理職の集計方法に注意点はありますか?
A. はい。本調査では「1人でも女性管理職がいれば該当」として集計されるため、企業規模が大きいほど該当率が高くなる傾向があります。

Q9. 女性活躍推進法の義務内容は?
A. 令和4年4月から、従業員101人以上の企業に対して一般事業主行動計画の策定が義務付けられました。この計画には、管理職に占める女性労働者の割合などが数値目標として含まれています。

Q10. 指導的地位に占める女性割合の目標は?
A. 第5次男女共同参画基本計画では、2020年代の可能な限り早期に30%程度まで引き上げることが目標とされています。ただし、現時点では達成は容易ではなく、法制度と社会構造の両面に課題があります。

Q11. 医療・福祉分野における女性管理職の状況は?
A. 総務省の調査によると、医療・福祉分野では女性の就業者が多く、長年にわたり主戦力として活躍してきた背景があります。そのため、女性が働きやすい環境づくりが進んでおり、一定数の女性が管理職として既に活躍しています。

Q12. ハラスメント対策の実施状況は?
A. パワハラ90.0%、セクハラ89.9%、マタハラ88.0%の企業が防止措置を実施しています。これらはそれぞれ以下の法令に基づき義務付けられています:
・パワハラ:労働施策総合推進法
・セクハラ:男女雇用機会均等法
・マタハラ:男女雇用機会均等法・育児・介護休業法

Q13. ハラスメント事案の発生状況は?
A. パワハラ相談・事案あり:14.6%、セクハラ:6.0%、マタハラ:0.9%。企業規模が大きいほど相談実績が多く、規模が小さい企業では「相談なし」とする回答が多くなっています。

Q14. 「望ましい取組」が進まない理由は?
A. 法的義務ではないこと、社外関係者が関わる対応の難しさ、制度整備に必要なノウハウやリソースの不足が背景にあります。企業規模による対応力の差も大きく、制度化には時間と支援が必要です。

Q15. 改正法による義務化の内容は?
A. 令和7年に成立した改正法(労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法)により、これまで「望ましい」とされていたハラスメント防止の取組が「義務」として位置づけられることになりました。企業は社外との関係も含めた対応が求められ、働く側にとっても保護の範囲が広がる重要な転換点となります。

  1. 「雇用均等基本調査」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r06/06.pdf)を加工して作成 ↩︎
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