令和5年 就労条件総合調査|退職給付制度の実態と見直し動向

目次

調査概要

令和5年の就労条件総合調査1は、厚生労働省が民間企業の労働条件の実態を把握するために実施した一般統計調査です。
対象は、常用労働者30人以上を雇用する民間企業約6,400社で、有効回答率は58.7%でした。

調査対象項目:退職給付制度とは

本調査では、以下の3点が主な分析対象となっています:

  • 退職給付制度の有無
  • 支払準備形態(社内準備・共済制度など)
  • 制度の見直し状況(過去・今後)

退職給付制度には「退職一時金制度」と「退職年金制度」があり、労働基準法上の義務ではありませんが、就業規則に定めることで制度化されます。。

退職給付制度の導入状況

  • 一時金または年金制度を導入している企業:74.9%
さくらもち

制度の導入は義務ではないものの、社会的に定着しているため、約7割の企業が何らかの退職給付制度を採用しています。

制度の形態別割合

退職給付制度を導入している企業のうち、制度形態は以下の通りです:

制度形態割合
一時金制度のみ69.0%
年金制度のみ9.6%
両制度併用21.4%
さくらもち

歴史的に、厚生年金保険制度が未成熟だった時代に企業が独自に退職一時金制度を整備してきた背景があり、現在でも一時金制度が主流です。

支払準備形態(退職一時金制度)

退職一時金制度を導入している企業の支払準備形態は以下の通りです:

  • 社内準備:最多
  • 中小企業退職金共済制度
  • 特定退職金共済制度(所得税法施行令第73条に基づく)
さくらもち

昭和34年に中小企業退職金共済制度が創設され、社内準備と共済制度の併用が一般化しています。

支払準備形態(退職年金制度)

退職年金制度を導入している企業の支払準備形態は以下の通りです:

  • 確定拠出年金(DC):最多
  • 確定給付企業年金(DB)
  • 厚生年金基金(※平成26年以降、新規設立不可)
さくらもち

厚生年金基金は制度縮小の影響を受け、現在では3番目の選択肢となっています。

制度の見直し状況

退職一時金制度

  • 過去3年間に見直しを行った企業:7.9%
  • 今後3年間に見直し予定の企業:6.7%

退職年金制度

  • 過去3年間に見直しを行った企業:4.0%
  • 今後3年間に見直し予定の企業:3.8%

見直し内容の傾向

  • 「新たに導入」または「既存制度に加えて別制度を設置」が最多

制度見直しの背景と法的動向

さくらもち

令和2年4月以降、パートタイム・有期雇用労働法により、正規・非正規間の不合理な待遇差が禁止されました。
中小企業では令和3年4月から適用され、同一労働同一賃金ガイドラインが示されたものの、退職金に関する明確な基準は示されていません。
今後は判例や実務運用をもとに、企業ごとの制度見直しが進むと考えられます。

FAQ:令和5年 就労条件総合調査|退職給付制度

Q1. この調査は何を目的としていますか?
A. 厚生労働省が企業の労働条件を把握するために実施した統計調査です。

Q2. 調査対象はどんな企業ですか?
A. 常用労働者30人以上の民間企業約6,400社です。

Q3. 退職給付制度はどれくらい普及していますか?
A. 一時金または年金制度を導入している企業は74.9%です。

Q4. 制度の種類には何がありますか?
A. 一時金制度のみが69.0%と最多で、年金制度のみは9.6%、両方併用は21.4%です。

Q5. 支払準備はどうしていますか?
A. 一時金は社内準備が最多。年金は確定拠出年金が主流です。

Q6. 制度の見直しは進んでいますか?
A. 一時金制度では約7%、年金制度では約4%の企業が過去3年で見直しを実施しています。

Q7. 今後の見直し予定はありますか?
A. 一時金で6.7%、年金で3.8%の企業が見直し予定と回答しています。

Q8. 見直しの内容は?
A. 新たに制度を導入する、または既存制度に加えて別制度を設ける企業が多いです。

Q9. 法改正との関係は?
A. 同一労働同一賃金の流れを受け、退職金制度も見直しが求められています。

  1. 「就労条件総合調査」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaikyou.pdf)を加工して作成 ↩︎
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