調査概要

令和5年の雇用均等基本調査1は、厚生労働省が男女の雇用管理の実態を把握するために実施した統計調査です。
対象は、常用労働者10人以上を雇用する民間企業約6,000社で、有効回答率は50.6%でした。
調査項目
本調査では、以下の3点が主な分析対象です:
- 昇進に関する女性管理職の割合
- 不妊治療と仕事の両立支援制度の有無
- ハラスメント防止対策の実施状況
女性管理職の割合と昇進状況
女性管理職がいる企業の割合

- 課長相当職以上の女性管理職がいる企業:8.6%
- 係長相当職以上の女性管理職がいる企業:13.3%
さくらもち令和4年4月からは、女性活躍推進法により、従業員101人以上の企業に対して「一般事業主行動計画」の策定が義務化されました。
この計画には、管理職に占める女性の割合を数値で示す項目が含まれており、企業は昇進状況の「見える化」に取り組み始めています。
管理職に占める女性の割合


- 課長相当職以上:14.6%
- 係長相当職以上:19.0%



第5次男女共同参画基本計画では、指導的地位に占める女性の割合を2020年代の可能な限り早期に30%程度まで引き上げることが目標とされていますが、現時点での達成は容易ではありません。 背景には、法制度の限界と、採用段階での女性比率の低さや昇進過程におけるキャリアの壁といった社会構造的な課題があります。
業種別の女性管理職割合


- 「医療・福祉」「教育・学習支援業」「金融・保険業」では女性管理職の割合が高い傾向にあります。



総務省の調査では、これらの分野では女性が主戦力として長年活躍してきた背景があり、職場環境の整備も比較的早期から進められていることが報告されています。
実際に、一定数の女性が管理職として既に活躍しているという声がヒアリング調査でも多く寄せられています。
不妊治療支援制度の導入状況


- 不妊治療と仕事の両立を支援する制度を導入している企業の割合は36.9%。
- 導入されている制度の種類としては:
・短時間勤務制度(最も多い)
・特別休暇制度
・時差出勤制度



これらの制度は法的義務ではありませんが、令和4年から「くるみん認定」のプラス評価対象となっており、制度整備が企業の社会的評価にもつながる可能性があります。
ハラスメントを防止するための対策の取組の有無


- 性的指向や性自認に関するハラスメントについて、社内通知や研修などで防止対策を明示している企業の割合は41.7%。



以下のハラスメントについては、それぞれの法律で防止措置が義務付けられています:
・パワーハラスメント:労働施策総合推進法
・セクシュアルハラスメント:男女雇用機会均等法
・マタニティハラスメント:男女雇用機会均等法および育児・介護休業法



性的指向や性自認に関するハラスメントには、現時点で明確な禁止条文はありませんが、厚生労働省の指針2では、セクハラやパワハラの枠組みの中で偏見に基づく言動が該当する可能性があると示されています。
法的義務ではなくても、企業の社会的責任としての対応が求められる領域です。
FAQ
Q1. 雇用均等基本調査とは何ですか?
A. 厚生労働省が実施する統計調査で、企業における男女の雇用管理の実態を把握することを目的としています。
Q2. 女性管理職の割合はどの程度ですか?
A. 課長相当職以上の女性管理職がいる企業は8.6%、係長相当職以上では13.3%です。
Q3. 管理職に占める女性の割合は?
A. 課長相当職以上で14.6%、係長相当職以上で19.0%です。
Q4. 業種によって女性管理職の割合に違いはありますか?
A. はい。医療・福祉、教育、金融分野では女性管理職の割合が高い傾向があります。
Q5. 不妊治療支援制度の導入状況は?
A. 制度を導入している企業は36.9%で、短時間勤務、特別休暇、時差出勤などが主な制度です。
Q6. ハラスメント防止対策は義務ですか?
A. パワハラ・セクハラ・マタハラは法律で防止措置が義務付けられていますが、性的指向や性自認に関するハラスメントは指針に基づく対応が求められています。
- 「雇用均等基本調査」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r05/07.pdf)を加工して作成 ↩︎ ↩︎
- 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針、事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針 ↩︎
