こんにちは、さくらもちです。
今回は厚生労働省が実施した「令和6年 賃金引上げ等の実態に関する調査」について、社労士試験の視点も交えてわかりやすく整理してみました。
調査概要

- 調査目的:民間企業における賃金・賞与の改定状況を把握するため
- 調査対象:常用労働者100人以上の民営企業から無作為抽出された3,622社
- 有効回答率:49.2%
さくらもちこの調査は一般統計調査に該当します。社労士試験でも“統計調査の種類”は頻出なので、覚えておきたいですね。
賃金改定の実施状況


- 賃金を引き上げた・引き上げる企業の割合:91.2%
- 改定方法の主な内訳:
・賃金表の改定
・定期昇給
・諸手当の改定
・賃金カット(ただし差額がプラスの場合)



賃金カットがあっても、結果的に改定額がプラスであれば“賃金引上げ”とみなされます
賃金改定額と改定率


- 1人平均改定額:11,961円
- 改定率:4.1%(改定前平均賃金に対する割合)



平均賃金の改定額は、企業が賃金を見直した結果、改定前と比べてどれだけ増えたかを示す数字です。
見直しの内容には、賃金表の改定、定期昇給、手当の変更、そして賃金カット(結果的にプラスになった場合)が含まれます。
改定率は、その改定額が改定前の平均賃金に対して何%かを表します。 つまり“どれくらい上がったか”を割合で示すものですね。



なお、ここでの平均賃金は、基本給や手当などの所定内賃金のみで、残業代や慶弔手当などの特別手当は含まれません。
定期昇給制度の有無と実施状況


- 管理職で定期昇給を行った・行う企業:76.8%
- 一般職で定期昇給を行った・行う企業:83.4%



就業規則には昇給に関する事項の記載が義務付けられていますが“昇給の実施そのもの”は義務ではありません。
制度設計の柔軟性がポイントですね。



必ず昇給させる旨の規定ではないものの、7、8割の企業が定期昇給を実施しています。
ベースアップの実施状況(定期昇給制度がある企業)


- 管理職でベースアップを行った・行う企業:47.0%
- 一般職でベースアップを行った・行う企業:52.1%



ベースアップは、賃金表そのものを見直して、全体の賃金水準を底上げすることを指します。
定期昇給が“個人の昇給”なのに対して、ベースアップは“制度全体の底上げ”というイメージですね。
目的としては、物価上昇による実質賃金の低下を補ったり、従業員のモチベーションを高めたりするために行われます。



今回の調査では、企業の約5割がベースアップを実施した、または予定していると回答しています。
社労士試験でも“ベースアップと定期昇給の違い”はよく問われるので、整理しておくと安心です。
賃金改定で重視された要素


- 最も重視された要素:企業の業績
- 次点:労働力の確保・定着、雇用の維持
賃金の改定の目的は、労働力の確保・定着、雇用の維持のためなどがありますが、一番の賃金改定の理由は、企業に資金・時間に余裕があるときになると思われます。



賃金改定の目的としては、従業員の確保や定着、雇用の維持などがよく挙げられます。
でも実際には、企業の業績が良好な場合に賃金改定が行われやすい傾向があります。
企業の業績評価(業績を重視した企業)


- 業績が「良い」:45.6%
- 「悪い」:15.2%
- 「どちらともいえない」:37.9%



企業が賃金を引き上げるかどうかを判断するうえで“業績評価”はとても重要な材料になります。
ただし、業績の評価方法については法律で決まっているわけではなく、企業ごとの判断に委ねられているのが実情です。



令和6年の調査では、企業がどんな指標を使って賃上げを決めているのか、その“意思決定の中身”を見える化することが目的とされています。
実際、業績が判断材料として最も多く挙げられているのは、支払い能力や制度設計の観点からも自然なこと。
業績は“賃上げの土台”であり、他の要因(人材確保や物価対応など)はその上に積み重なる補足的な理由といえます。
夏の賞与の支給状況


- 支給した・支給する企業:88.1%
- 支給するが額未定:3.9%
- 支給しない:6.5%



賞与は“臨時の賃金”にあたります。
就業規則では“相対的必要記載事項”として扱われていて、制度がある場合には記載が必要ですが、制度そのものの設置は義務ではありません。



とはいえ、今回の調査を見ると、ほとんどの企業が賞与制度を設け、実際に支給していることがわかります。
実務上は“あって当然”のように運用されているケースが多いですね。
労働組合による賃上げ要求状況


- 労働組合がある企業:24.5%
- 賃上げ要求交渉があった企業:80.2%
- 交渉がなかった企業:15.6%



労働組合による賃上げ要求は、労働組合法や憲法で保障された“正当な権利”です。
企業との交渉は、労働者が自分たちの待遇を改善するための大切な手段なんですね。
令和6年の調査では、企業がどんな要求を受けているのか、その実態を把握することで、賃金交渉の流れや労使関係の変化が見えてきます



労働組合がある企業は全体の24.5%と少数派ですが、従業員数が多いため、労働者全体への影響力は大きいです。
実際、制度づくりや賃金の話し合いでは、労働組合のある企業が先行して取り組むことが多く、労働環境の改善にも重要な役割を果たしています。
FAQ
Q1. 賃金改定を実施した企業の割合は?
A. 1人平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は91.2%です。
Q2. 平均賃金の改定額と改定率は?
A. 改定額は11,961円、改定率は4.1%です。
Q3. 定期昇給制度の実施状況は?
A. 管理職では76.8%、一般職では83.4%の企業が定期昇給を実施または予定しています。
Q4. ベースアップの実施状況は?
A. 定期昇給制度がある企業のうち、管理職では47.0%、一般職では52.1%がベースアップを実施または予定しています。
Q5. 賃金改定で重視された要素は?
A. 最も多かったのは「企業の業績」、次いで「労働力の確保・定着」、「雇用の維持」でした。
Q6. 企業の業績評価の結果は?
A. 「良い」と回答した企業が45.6%、「悪い」が15.2%、「どちらともいえない」が37.9%でした。
Q7. 夏の賞与の支給状況は?
A. 支給した・支給する企業は88.1%、支給するが額未定は3.9%、支給しないは6.5%です。
Q8. 労働組合による賃上げ要求の状況は?
A. 労働組合がある企業のうち、80.2%が賃上げ要求交渉を行ったと回答しています。
