調査の概要と目的
調査の目的と活用
この記事では、厚生労働省が令和4年に実施(令和5年公表)した「雇用均等基本調査(企業調査)」1の内容をもとに、企業における雇用管理制度の導入状況やハラスメント防止対策について詳しく解説します。
この調査は、男女の雇用機会均等に関する企業の実態を把握し、行政施策の検討に活用される重要な統計資料です。
調査対象と回答率

対象は、常用労働者が10人以上いる民間企業約6,000社で、有効回答率は51.6%でした。
調査の構成と分析ポイント
以下の4つのテーマに沿って、調査結果をわかりやすく整理しています:
・コース別雇用管理制度の導入状況
・コース転換制度の有無と柔軟性
・制度の見直し状況と見直し内容
・ハラスメント防止のための企業の取り組み
コース別雇用管理制度の導入状況
導入率と企業規模の関係

令和4年調査によると、コース別雇用管理制度を導入している企業の割合は以下の通りです:
| 企業規模 | 導入率 |
|---|---|
| 常用労働者10人以上 | 5.5% |
| 常用労働者30人以上 | 10.1% |
さくらもち特に5,000人以上の大企業では導入率が約60%に達しており、制度の定着が進んでいる傾向が見られます。
制度の背景と目的



この制度は、昭和61年の男女雇用機会均等法の施行を契機に、従来の男女別雇用管理を見直す形で普及しました。 企業は職種や勤務地、転勤の有無などに応じて複数の雇用コースを設定し、それぞれ異なる管理を行っています。
コース転換制度の有無と柔軟性
転換制度の導入状況


コース別制度を導入している企業のうち、コース転換制度があると回答した割合は81.2%。



これは、従業員の希望や能力に応じて柔軟にコースを変更できる制度が広く浸透していることを示しています。
厚労省の指針との関連



厚生労働省の雇用管理指針では、「コース間の転換を認める制度の柔軟な設定」が推奨されており、企業規模にかかわらずこの考え方が広がっています。
コース別雇用管理制度の見直し状況
制度見直しの実施率


過去3年間に制度の見直しを行った企業は33.3%。



約3社に1社が制度内容を改善しており、導入後の継続的な見直しが重要視されています。
見直し内容の傾向


見直し項目として多かったのは以下の3点です:
1.職務内容・職務レベルの見直し
2.各コースの処遇の見直し
3.職務内容に応じたコース区分の見直し



これらは、厚労省の指針にも明記されており、制度の公平性と柔軟性を保つための重要な取り組みです。
ハラスメント防止のための企業の取り組み
対象となるハラスメントの種類
調査では、以下の3種類のハラスメントに対する企業の対応状況が確認されました:
・セクシュアルハラスメント
・マタニティハラスメント(妊娠・出産・育児休業等)
・パワーハラスメント
最も多かった対策内容





企業が最も多く実施している対策は、「就業規則や労働協約で方針を明確化し、書面で周知する」ことでした。 このような対応は、職場の安心感を高め、トラブル予防にもつながります。
法的根拠と義務
| ハラスメントの種類 | 根拠法令 |
|---|---|
| パワハラ | 労働施策総合推進法 |
| セクハラ | 男女雇用機会均等法 |
| マタハラ | 男女雇用機会均等法・育児・介護休業法 |



企業はこれらの法令に基づき、厚労省の指針を参考にしながら防止措置を講じる義務があります。
社労士試験・実務への活用ポイント
試験対策で問われる内容
- 各ハラスメントに対応する法令の組み合わせ
- 防止措置の義務内容
- 指針の法的拘束力の有無
- 書面による方針明示と周知義務
実務での活用場面
- ハラスメント防止規程の作成・改訂
- 就業規則への反映と周知支援
- 労使協議・研修資料の整備
- 行政調査対応時の書面整備
まとめ:制度導入から実務活用までの視点
| 観点 | 試験で問われる内容 | 実務で活かす場面 |
|---|---|---|
| 法令理解 | 各ハラスメントに対応する法律 | 規程・就業規則の整備支援 |
| 指針の位置づけ | 法的拘束力の有無 | 実務対応の参考資料 |
| 書面による周知 | 義務の有無と方法 | トラブル予防・証拠整備 |
- 「令和4年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r04/07.pdf)を加工して作成 ↩︎
