令和5年度「就労条件総合調査」解説:賃金制度の注目ポイント

こんにちは!さくらもちです。
これまでの社労士試験の経験を活かし、統計調査を分かりやすく解説しています。今回は令和5年度「就労条件総合調査」1から「賃金制度」に関する調査結果をお届けします。特に「時間外労働の割増賃金率」に焦点を当てています。
調査概要
R5就労条件総合調査の概要

就労条件総合調査は、民間企業における就労条件の現状を明らかにするための厚生労働省が実施する一般統計調査です。
- 調査対象:常用労働者30人以上の民間企業から無作為抽出した約6,400社
- 有効回答率:58.7%
- 調査日:令和5年1月1日現在
調査結果のポイント
1. 時間外労働の割増賃金率

結果
- 時間外労働の割増賃金率を一律に定めている企業割合:86.4%
- そのうち、25%とする企業割合:94.3%
- 26%以上とする企業割合:4.6%

法定の時間外労働の割増賃金率は25%以上と定められています。



大多数の企業が法定下限値(25%)を採用しており、26%以上を定めている企業は少数派です。
もう一度確認!
時間外労働の割増賃金率を25%とする企業は94.3%、一律に定めている企業割合は86.4%です。
2. 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率①


結果
- 60時間超の時間外労働に係る割増賃金率を定めている企業割合:33.4%
- 割増賃金率が25~49%の企業割合:33.3%
- 割増賃金率が50%以上の企業割合:64.5%



令和5年4月1日から、中小企業にも60時間超の時間外労働に対する割増賃金率50%以上が適用されました。ただし、この調査は令和5年1月1日時点のもので、中小企業の多くは適用外となっています。
割増賃金率が25~49%の割合が33.3%と一定数いる理由も、この背景によるものです。



就業規則に60時間超の割増賃金率を定めていない場合は、労働基準法の規定が適用されます。
もう一度確認!
割増賃金率が50%以上の企業割合は64.5%、25~49%の割合は33.3%です。
月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率②(中小企業 vs. 中小企業以外)


結果
- 中小企業と中小企業以外で比較すると、中小企業以外(大企業)の割合が高い結果となりました。



令和5年4月から、中小企業でも60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%以上に引き上げられましたが、この調査は施行前のデータです。



中小企業以外の大企業では、既に50%以上の割増賃金率を導入している企業が多く見られるため、中小企業以外の割合が高い結果となっています。
もう一度確認!
中小企業以外では、50%以上の割増賃金率が多く採用され、中小企業より割合が高いです。
まとめ
調査結果のポイント一覧
- 時間外労働の割増賃金率:一律に定めている企業は86.4%、そのうち94.3%が25%と設定
- 月60時間超の割増賃金率:
・割増率50%以上を採用している企業割合は64.5%
・中小企業よりも中小企業以外の割合が高い
さくらもちの総括
令和5年度「就労条件総合調査」は、企業の賃金制度の現状を知るだけでなく、社労士試験の重要な試験対策にも役立ちます。特に時間外労働の割増賃金率や月60時間超の割増賃金は、令和5年4月施行の法改正も絡む重要ポイントです。
試験や実務で役立つ情報を引き続き発信していきますので、ぜひチェックしてください!
- 「就労条件総合調査」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaikyou.pdf)を加工して作成 ↩︎